このセクションでは、Apigee Edge for Private Cloud の Cassandra をラック対応にすることで Cassandra のオペレーションをスケーリングする方法についての一般的なガイダンスを示します。
Cassandra リングをラック対応にすることがなぜ重要であるかについては、次のリソースをご覧ください。
- レプリケーション(Cassandra のドキュメント)
- Cassandra のアーキテクチャとレプリケーション係数に関する戦略
ラックとは
Cassandra ラックとは、リング内の Cassandra ノードを論理的にグループ化したものです。Cassandra はラックを使用して、異なる論理グループの間でレプリカを分散させます。その結果、オペレーションは単一のノードではなく(それぞれ異なるラックに属する)複数のノードに送信され、フォールト トレランスと可用性が向上します。
このセクションに示す例では、3 つの Cassandra ラックを使用します。これは Apigee の本番環境トポロジでサポートされているラックの数です。
Apigee Edge for Private Cloud の Cassandra のデフォルト インストールでは、論理ラックの数が 1 つと想定されており、データセンターのすべてのノードがそのラックに配置されます。この構成はインストールと管理が簡単ですが、耐障害性が低く、いずれか 1 つのノードでオペレーションが失敗しただけで障害につながる可能性があります。
次の図は、Cassandra リングのデフォルト構成を示しています。

より堅牢な構成では、各ノードが別々のラックに割り当てられ、各ラック上のレプリカでもオペレーションが実行されます。
次の図は、3 ノードのリングを示しています。この図は、オペレーションがリング全体にレプリケートされる順序(時計回り)を示し、すべてのノードがそれぞれ異なるラックに属していることがわかります。

この構成では、オペレーションが 1 つのノードに送信されるとともに、そのノードの他のラックにあるレプリカにも(時計回りの順に)送信されます。
ラック対応を追加する(3 ノードの場合)
Apigee Edge for Private Cloud のすべての本番環境インストール トポロジには、少なくとも 3 つの Cassandra ノードがあります。ここでは、それぞれ「IP1」、「IP2」、「IP3」と呼びます。デフォルトでは、これらのノードはすべて同じラック(ra-1)にあります。
このセクションでは、Cassandra ノードを別々のラックに割り当てる方法を説明します。これにより、すべてのオペレーションが、リング内の別々の論理グループに属するレプリカノードに送信されるようになります。
インストール中に Cassandra ノードを別のラックに割り当てるには:
- インストーラを実行する前に、Cassandra ノードにログインして次のサイレント構成ファイルをエディタで開きます。
/opt/silent.conf
このファイルが存在しない場合は作成します。その際、必ず「apigee」ユーザーを所有者にしてください。
CASS_HOSTS
プロパティを編集します。これは、次の構文に従うスペース区切りの IP アドレスのリストです(DNS やホスト名のエントリではありません)。CASS_HOSTS="IP_address:data_center_number,rack_number [...]"
デフォルト値には、次の例のように、3 ノードの Cassandra リングの各ノードがラック 1 およびデータセンター 1 に割り当てられています。
CASS_HOSTS="IP1:1,1 IP2:1,1 IP3:1,1"
- ラック割り当てを次の例のように変更し、ノード 2 をラック 2 に、ノード 3 をラック 3 にそれぞれ割り当てます。
CASS_HOSTS="IP1:1,1 IP2:1,2 IP3:1,3"
このようにラック割り当てを変更すると、Cassandra に 2 つの追加論理グループ(ラック)が作成され、最初のノードが受信したすべてのオペレーションを受け取るレプリカが用意されます。
CASS_HOSTS
構成プロパティの使用の詳細については、Edge 構成ファイル リファレンスをご覧ください。 - 構成ファイルの変更内容を保存した後、次のコマンドを使用して、変更後の構成を使って Cassandra をインストールします。
/opt/apigee/apigee-setup/bin/setup.sh -p c -f path/to/silent/config
例:
/opt/apigee/apigee-setup/bin/setup.sh -p c -f /opt/silent.conf
- リング内の各 Cassandra ノードに対して、
CASS_HOSTS
プロパティでノードを割り当てた順に同じ手順を繰り返します。この例では、次の順序で Cassandra をインストールする必要があります。- ノード 1(IP1)
- ノード 2(IP2)
- ノード 3(IP3)
インストールが終わったら、Cassandra の構成を確認します。
Cassandra の構成を確認する
ラック対応 Cassandra 構成をインストールした後、次の例のように nodetool status
コマンドを使用して、各ノードが別々のラックに割り当てられていることを確認できます。
/opt/apigee/apigee-cassandra/bin/nodetool status
このコマンドはどの Cassandra ノードで実行してもかまいません。
次のような結果が表示されるので、各ノードの Rack 列に示されたラック ID が異なることを確認します。
Datacenter: dc-1 ======================== Status=Up/Down |/ State=Normal/Leaving/Joining/Moving -- Address Load Tokens Owns Host ID Rack UN IP1 737 MB 256 ? 554d4498-e683-4a53-b0a5-e37a9731bc5c ra-1 UN IP2 744 MB 256 ? cf8b7abf-5c5c-4361-9c2f-59e988d52da3 ra-2 UN IP3 723 MB 256 ? 48e0384d-738f-4589-aa3a-08dc5bd5a736 ra-3
Cassandra で JMX 認証を有効にした場合は、nodetool
にユーザー名とパスワードも渡す必要があります。詳細については、nodetool でクラスタノードを管理するをご覧ください。
6 ノードリングをインストールする
冗長性を高めるため、Cassandra リングを 6 ノードに拡張できます。この場合は、3 つのラックにノードを 2 つずつ割り当てます。この構成を使用するには、ノード 4(IP4)、ノード 5(IP5)、ノード 6(IP6)の 3 つの追加ノードが必要です。
次の図は、オペレーションがリング全体にレプリケートされる順序(時計回り)を示しています。レプリケーション中に、隣接する 2 つのノードが同じラックに属していないことがわかります。

この構成では、各ノードに 2 つのレプリカが追加されます(他の 2 つのラックに 1 つずつ)。たとえば、ラック 1 のノード 1 にはラック 2 とラック 3 にレプリカがあります。ノード 1 に送信されたオペレーションは、他のラックのレプリカにも時計回りの順に送信されます。
3 ノードの Cassandra リングを 6 ノードの Cassandra リングに拡張するには、サイレント構成ファイルで次のようにノードを構成します。
CASS_HOSTS="IP1:1,1 IP4:1,3 IP2:1,2 IP5:1,1 IP3:1,3 IP6:1,2"
3 ノードリングの場合と同様に、CASS_HOSTS
プロパティでノードが指定されているのと同じ順序で Cassandra をインストールする必要があります。
- ノード 1(IP1)
- ノード 4(IP4)*
- ノード 2(IP2)
- ノード 5(IP5)
- ノード 3(IP3)
- ノード 6(IP6)
* サイレント構成ファイルを変更する適切なタイミングは、4 番目のノード(Cassandra のインストール順序でいうと 2 番目のマシン)でセットアップ ユーティリティを実行する前です。
12 ノードに拡張する
フォールト トレランスと可用性をさらに高めるため、リング内の Cassandra ノードの数を 6 から 12 に増やすことができます。この構成では、さらに 6 つのノード(IP7~IP12)が必要です。
次の図は、オペレーションがリング全体にレプリケートされる順序(時計回り)を示しています。レプリケーション中に、隣接する 2 つのノードが同じラックに属していないことがわかります。

12 ノードリングをインストールする手順は、3 ノードリングまたは 6 ノードリングをインストールする手順とほぼ同じです。CASS_HOSTS
に適切な値を設定し、そこで指定した順にインストーラを実行します。
12 ノードの Cassandra リングに拡張するには、サイレント構成ファイルで次のようにノードを構成します。
CASS_HOSTS="IP1:1,1 IP7:1,2 IP4:1,3 IP8:1,1 IP2:1,2 IP9:1,3 IP5:1,1 IP10:1,2 IP3:1,3 IP11:1,1 IP6:1,2 IP12:1,3"
3 ノードリングまたは 6 ノードリングの場合と同様に、構成ファイルでノードを指定した順にインストーラを実行する必要があります。
- ノード 1(IP1)
- ノード 7(IP7)*
- ノード 4(IP4)
- ノード 8(IP8)
- ノード 2(IP2)
- ノード 9(IP9)
- ノード 5(IP5)
- ノード 10(IP10)
- ノード 3(IP3)
- ノード 11(IP11)
- ノード 6(IP6)
- ノード 12(IP12)
* これらの変更は、7 番目のノード(Cassandra のインストール順序でいうと 2 番目のマシン)に Apigee Edge for Private Cloud をインストールする前に行う必要があります。